WORLD CELL 1998
Japanese Language

第二次世界大戦中、タイ王国カンチャナブリで一万人の橋大工が死んだ。その無益な死が WORLD CELL によって記録され、世界の運行様式として採用されれば、再び世界中で同じ悲劇が繰り返されてしまう。 その事態を回避するため、捕虜として橋建設に携 わっていた一人の橋大工 KINGは脱走し、WORLD CELL を停止させた。 目的を果たし、あてもなく広野を放浪していた KING は謎の存在クワイト・ゼロに拾われ、その後の一生を利他的に働く世界の庭師として生きるよう命じられた。 その後 WORLD CELL は、大戦による損傷を受けたが、50年後のメンテナンスを待ちながら活動を再開した。

しかし、50年後、メンテナンスを目前にして WORLD CELL は停止した。 その修復にあたっていたKINGは、過労によるストレスと、WORLD CELL の停止によってこの世に生じた「存在麻痺」に襲われて倒れてしまった。 早くWORLD CELL を動かさなければ、「存在麻痺」が世界中に蔓延してしまう。

橋大工ヒラサワは、KINGに代わってWORLD CELLを修復すべく、「救済する橋のギルド」(インターネット上の在宅オーディエンス)と「応援する橋のギルド」(会場のオーディエンス)の協力を得て地の果てにある WORLD CELL へと向かう。 壮絶な谷や河に次々と橋を架け、破損を修復し、一行は進んでいく。「存在麻痺」をもたらすデジタル・ホルモン「イレーサー」による妨害もヒラサワの攻撃によって退けた。

一方その頃、KINGは、かつて多くの仲間の命を奪った一瞬の衝撃について繰り返し夢を見ていた。彼は失われた人々がいつか戻ると信じ、その日のために働き続けていたのだ。 瀕死のKINGの元にクワイト・ゼロの使い JEHM が現れる。JEHMはKINGに目覚めを促し、人々を呼び戻すため彼をMotherの元へと送り届ける。自ら生命維持装置を外すKINGに、Motherは死の種子(Death seed)を降らせる。

最後の谷を渡るヒラサワ一行。近づいてくる彼らの声は、死んだKINGの耳に、彼が夢見てきた「人々の帰還」として響いた。 WORLD CELLに到着した一行をクワイト・ゼロが迎える。WORLD CELLはKINGの死と共に再び稼働を始めていた。

クワイト・ゼロによれば、WORLD CELLには記録し続けた "世界の経験ログ" を解析し自ら停止する能力を持っていたのだという。 クワイト・ゼロは、死滅するWORLD CELLを次世代のそれとして再生させるために、その自滅プログラムをKINGにも適用した。 そして、より良き "経験ログ"を継承するために、WORLD CELLとKINGのログをMIXし、残された"世界にとって不利益なログ"は、両者の死と共に抹消したのだ。

クワイト・ゼロは告げる。「今や、新世代WORLD CELLが動き始め、新たな世界、PHASE-6が誕生した。そしてKINGは再び働き始めたのだ。WORLD CELLが出力する"世界の存在様式"として。来る日も来る日も人々の一生を完全にまっとうさせる、世界の王として」