θ=5 β=5

<<<走るヒラサワ>>>

05/12/26、新譜のレコーディングも終わり、ほんの一瞬の空白をバンコクで過ごすために私は一人タイへ飛んだ。空白と言っても無理矢理ひねり出した休日で、ほんとうは遊んでなんかいられないのだ。しかし今休まなければずっと休めないとふんだ私は、年末の海外旅行ラッシュ直前を狙って首尾良く脱出したのだ。sato-kenは一週間前からタイ国内でいろいろと動き回っていた。私がバンコクに到着する日は、sato-kenはプーケットに居ることになっていた。今回の宿はホテルではなく、いわゆる「サービス・アパートメント」と呼ばれている、長期滞在用の宿泊施設で、料金は通常月単位で支払うことになっている。意外と知られていないのだが、実はこうした施設でも短期滞在者に日割り計算の料金で貸すところがある。外見や部屋はホテルと同じだが、実はホテルより安く、部屋は格段に広い。私が泊まった一泊約4,000円の部屋はドアを開けると10畳ほどの居間があり、次いでキッチン、バスルーム、その奥にはキングサイズのベッドが二つ置かれた広々とした寝室。勿論、エアコン、TV、電話も設置されているし、ちゃんとお湯もでる。残念ながらこういう所はウエブ・ページを持っていないのでインターネットでは見つけられず、予約もネットでは出来ない。難点を言えば、車も入れない路地の奥にあったり、窓を開ければ地域住民のゴミ捨て場だったりする程度。オイ、誰だそんなところに仏像捨てたヤツは。

実はもう一つ大きな問題が有り、おかげで私は毎日広い部屋の中で猛ダッシュを何度も繰り返すことになった。いや、何かが壊れていたり、危険なものがあるわけでもない。このへんのところは勿体ぶって次回「亜種音TV」で話そうか、やっぱりやめようか、などとわりかしエゲツナイ発想をしたりもする拙である。

着いて早々猛ダッシュを繰り返す私をおもしろがって見ているWaiの携帯にプーケットのsato-kenから電話が入り、Waiが言う

「さとうさん、いま空港。これからバンコクに来る」

あ、そう。じゃお友達を招集しておかなくちゃ。Waiがsato-kenに言う

「ししょう、もんだい解決した。でもわたしわからない。ししょう、部屋の中、走る。走ると問題解決する。わたし意味わからない・・・」

電話を切ったWaiが私に言う

「こんどは、わたし走ります」

え、なんで?

「さとうさん言った。お客さん走らせるの良くない。だから、わたしかわりに走る」

つづく(と思う・・)