パスの重き門-5

θ=5 β=5

—-タニヤ・ノンリニア・ガール—–

信じられるか?ここから先、ヒラサワとsato-kenの行動に2人の本物の女性が付いてまわることになる。一人は元カラオケ店のホステス(タイのカラオケは客にホステスが同席するというシステムになっている)、もう一人は、日本に出稼ぎに行っていたが、ビザの関係で帰国中の女性。さて、2人の女性にはどんなふうに出くわし、どんなことが起こったか。

LISAとお別れしたおかげで、予定していた夜の行動プランは全て消滅。緊急出動要請のカトゥーイは今日もNG。カトゥーイのお友達が居ないBangkokの退屈な夜をどうやって過ごそう。初対面のカトゥーイと食事したり歓談したりするのはいとも簡単だが、本当の良いお友達を得るのは簡単ではない。

はてさて、我々はsato-kenの古い友人がママを務めるカラオケ店へと向かう。別にカラオケをしようという訳ではない。まったく会話のつまらないホステスと歓談しようという訳でも無い。勝手知ったるVIPルームを占領し、今夜の即席プランを練ろうという訳だ。店内でホステスの腰を抱き、ここはこの世の桃源郷と言わんばかりの笑みを浮かべて熱唱する日本人オヤジ軍団の騒音をくぐり抜けてVIPルームへ直行。ドアを閉めれば静寂が広がる。しかし、あれ?

「あれ?おまえ何で私服なの?」客のいないVIPルームで一人TVゲームをしていた顔見知りのホステスは何故か私服だった。聞けば彼女は既にこの店を辞め、今は無職。暇なのでここでゲームをして我々を待ってたいたという。わけわからん!この、わけわからん国のわけわからん場所でわけわからん事をしているわけわからん女の通称はMintという。

Mint:あ?LISA一緒じゃないの?
ヒラサワ:カクカクシカジカ

いったいこれからどうしたものかと話し合う我々にMintが介入する。人生相談をしたいらしい。どうせ暇だから聞いてやっても良いが、過去の経験から、タイ人の相談事は埒が明かない。勿論全てのタイ人がそうとは言わないが、私が受けた相談は全て不毛な結果に終わった。

Mint の相談は単純だった。つまり、職が無いと。こういうのが一番厄介だ。タイ人の気質を否定するつもりはないが、ちょっとしたことで解決する問題も彼らの気質によって解決のチャンスを不意にしてしまう。私が相談を受けたタイ人は皆、目標を決め実現のために段階を経るという考え方をどうしても理解しようとしない。何故そうなのかは理解できるが、ここでは書かない。Mintはバカなのではない。彼女にとって「こう成りたい」「こういう仕事をしたい」「こういう仕事ならできる」「こういう仕事なら我慢できる」が全て現在に有り、「こう成りたい」がために「まずこの仕事をして時期を待つ」という発想にはならず、いきなりゴールの職を探しては見つからないと嘆いたりする。だから、いくら話しても埒が明かない。めんどくさいことが大嫌いなタイ人は、複雑な話しになるとめんどくさくなり、「この話しはもうやめよう」と言い出す。

「この話しはもうやめようよ」とMintは自ら相談を打ち切った。はい、そうしましょう。

Mint:今日つまんない。
ヒラサワ:なんで?(勝手なやつだと思いつつ)
Mint:さっきママさん電話きた。サトウ、ヒラサワ来る話した。だからLISA姉さんも来ると思って待ってた。

Mintはカトゥーイが大好きだ。外見がほとんど子供なので敵意も持たれない。

Mint:カトゥーイに会いたい!
sato-ken:sato-kenも会いたい!

意気統合されてしまった。しかたない、歩いて行ける距離だし、今夜もまたあそこか。

ヒラサワ:キンコンナーでいい?
Mint:行きたい!
sato-ken:行きたい!

ところで、カトゥーイの居る場所は他にいくらでもある。何故別の場所へ行かないかは、非常にややこしい話になるので省く。

★用語解説★
タニヤ:主に日本人向けのカラオケやクラブなど歓楽施設が並ぶ通りの名前。